文章を書く練習

文章を書く練習をします。見たもの読んだものの感想

「二月の勝者」高瀬志帆:狂気と教育

二月の勝者 ―絶対合格の教室―(1)【期間限定 無料お試し版】 (ビッグコミックス)

 

[あらすじ]

「君たちが合格できたのは、父親の経済力と母親の狂気」というセリフから始まり、カリスマ塾講師黒木が新人講師の主人公たちと共に、中学受験塾の弱小校舎を建て直していく

 

受験を描いた作品は世の中にたくさんあるけれど、中学受験となると家庭環境や親子の関係性を描かざるを得ないところがテーマとしてめちゃくちゃ面白い。

サービス業として成り立たせることと親子にとってより良い選択であること、そもそもメンタルふわふわな12歳をどうやって乗せるか。

本来7月からドラマ放送予定だったらしいがコロナで延期中らしく、主人公が井上真央なのはちょっと暑苦しそうだけど見てみたい。

 

いろんな子供と家庭がバリエーション豊かに描かれており、家庭の事情を覗き見するのが大好きな私はかなり面白かった。

以下若干ネタバレ含みます。

 

 

 

・お花屋さんになりたい子

将来の夢にお花屋さんと書いたら親の反応が悪く、「なんでお花屋さんじゃダメなの?」と主人公に聞く女の子に対して、主人公はその子の夢をサポートできるような志望校を模索するけれど、黒木は子供の夢なんか真に受けて志望校の理由づけにするなと叱る。

 

 大体のエピソードで主人公はちょっと甘くて、黒木の言うことはもっともだな〜という印象でこれもその通りなんだけど、真に受けずに尊重するのって難しいよな…親の立場だと無視するわけにもいかんしな…しかし12歳の言うことなんてコロコロ変わったりふわふわしていたりするしな…(実際この子もマジでお花屋さんになりたいわけではなく、前に書いたら当時は褒められたからまた書いたという感じ)

私が小学生の時も、将来の夢は自由に書きなさいと言われるけどもう大人が何に喜ぶかは見えていて、でも自分が大人になっていくリアリティなんて微塵も感じてないから書くのめちゃ難しかったことはしっかり覚えてる。

学校の外のことなんてよく分からないのに大人の期待だけビシビシ感じてしまう子供って大変だ。大人でよかった!

 

・校舎で最下位の子

カードゲームが好きで、勉強のやる気もなくいつもテストは最下位…という明らかに受験不向きな男の子が出てくる。

他の子の勉強の邪魔をしてトラブルになったため黒木が系列の個人塾へ斡旋するが、主人公はその子のためにも普通の小学生に戻してあげたいと言う。

 

「普通」の言葉の中に理想や思いこみのニュアンスが無意識に入ってしまうことってままあるけれど、それが子供に向かってしまうとなかなかグロテスクな光景になるなと思った。

その後「普通の小学生」の実態として、スマホゲーとかカードゲームとか課金しないと放課後の居場所がないというくだりもあって世知辛い。

 結局この子は母子家庭で親の目を離れる時間が多い中、娯楽やそれにまつわるトラブルと上手く距離を置くための入塾であった、と言うことでそのまま個人塾へ移籍。

いろんな理由で子供は塾に来ているけれど、向いてないからはやめさせる理由にならない。自分が親だったら、この子供だったらと思うと難しい。

別の子で鉄道オタクで最初は全く授業に身が入らなくてテストも悪かったのに、「鉄道研究会に入る」「好きな電車で通学する」というモチベーションでぐいぐい成績上がる子がいるんだけど、こんなに親の思惑と子の興味が綺麗にハマるばっかりじゃない。

 

・父親DV開成志望の子

ここまでじゃないけれど親が過剰に入り込んじゃうパターンも身近にいたので想像できてしまうし、私が知らないだけで同じ塾にもいたかもなと思うと辛い。 

母親を守るために勉強するって環境が強烈すぎるけれど、それでも本人が勉強楽しいと思えているのが救いだし、親子ともに幸せになってほしい…

 

漫画としてはあと2〜3巻くらいで完結しそう?なので早く結末を見届けたいです。

 

 

 

↓書くと色々思い出してきたので、以下はただの受験の思い出・個人のエモ

 

日能研サピックスには程遠い、丁度漫画の桜花ゼミナールみたいな規模感の塾に通っていて、クラスは5つに分かれていて、席順は自由。先生との距離が近くて質問もしやすかった。

しばらく一番上のクラスにいて、確か最後のクラス替えで下に落ちた記憶がある。

その時に自分がどういう感情だったのかがすごく気になるが全く思い出せない。というかそもそも自分がどういうモチベーションで中学受験をしていたのかが思い出せない。入試直前はあとちょっとで解放されるぜ〜!みたいな、とにかく終われという感じだった気がするし。

地元中学が荒れていた(当時薬で捕まる中学生がいた)ので、進学するの嫌だなあ〜と親にボヤいたら、じゃあ中学受験してみる?と言われて気づいたら受験していたので、おそらくこの学校に行きたいというモチベーションじゃなく、地元中学は嫌だという消極的理由と、ただ勉強が楽しいからやってたと予想。楽しいからやる、を形にしてもらえる環境だったのはありがたい。

でも宿題は当時から嫌いだったはずなので、どうやって宿題やらないマンに宿題させていたのかが気になる。今の私にもそのやり方教えて欲しい…

 

父親は当時あまり家にいなかった気がするし、母親も私の勉強に付き合うなんてことは全くせず、わからないこと聞いても「お母さんは中学受験してないしわからないから先生に聞くか、自分で調べなさい(=母を頼るんじゃない)」しか言わなかった。おかげで自分で調べる癖は割とついた。

(でも弟の受験時はがっつり付き合って教えてたの、完全にアンフェア)

 

あと断片的に覚えているのは合宿で発熱退場したこと(嫌だったのかな)、国語の偏差値が80超えたこと(その後しっかり暴落)、教室から見える桜が最高だったこと。

丁度教室が桜並木の前にあるビル3階だったので、風がふく度に桜が舞い踊る素晴らしい花見スポットだった。舞う、というレベルじゃなく、ディスコで踊り狂うような具合いだった。

目に焼き付くような景色が春の間毎日見れたのはかなり良かった。できれば死ぬ時とかにもう一回見たいけれど、絶対に塾では死にたくない。