文章を書く練習

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「Bread &Butter」芦原妃名子:夫婦の食卓と責任

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芦原妃名子といえば砂時計で、こんな人間関係の重い話を少女たちに読ませようとする大人よ…と当時から思っていたが、この漫画はいい意味で軽やかさもあって、しかし誠実で読みやすかった。10巻完結です。

 

[あらすじ]

35歳で教師を退職した主人公柚季は婚活を始めるもうまくいかず、疲弊していたところに文具店の一角でパンを焼く洋一と出会う。パンの美味しさに感動した勢いの逆プロポーズが成功し、2人でパンを作りながらお互いを知っていくことになる。

 

 

 

 

(このあらすじから想像される話面白くなさそうだなと思ったけれど、これ以上書きようがなかった)

2人でパン屋頑張るのかな?というふうに読めますが、7巻からはなかなか面白い展開になります。あとめちゃくちゃパンが食べたくなるので深夜に読むとしんどい。

 

知らない2人が突然結婚することになり…!?みたいな入口ではあるけれど、テーマとしては人間同士が寄り添って生きるということを食事・食卓を通して見せていく話。

主人公柚季と洋一を中心にいろんな夫婦や家庭が出てくるのだけれど、主人公らを筆頭にどこも何かしらの問題はあって、それが必ず食卓に出てくる。

洋一のパン屋は採算度外視の道楽なので、前半はただ一緒にご飯食べるの楽しい&パン作るの楽しいをベースに進むが、2人が将来を考えていくにあたってそうもいかなくなっていく。他人同士が共に暮らしていくシビアさと愉快さを、他の家庭の話を交えながら見せてくる展開が良い。

(洋一は自己完結型で若干ナルシストで言葉足らずなアラフォー男性なので、こういう人の厄介さとかにも共感できます)

 

道楽でやる商売にはなんの責任も伴わないけれど、これで食っていこうと覚悟を決めた途端にいろんなプレッシャーが舞い込んでくる。特にこの2人は特に恋から始まっている関係ではないので、後半に行くにつれてお互いの覚悟の問題になってくる感じとかは自分の身にも覚えがあってヒヤヒヤする。

(まあキャラクター配置的に最後は2人でうまいところに収まるのだろうとは思いつつ、恋愛ベースじゃないからこそこの過程が複雑で面白くなっている印象)

 

「美味しいご飯でも、砂を噛むような不味いご飯でも、必ず食卓に座ると選び続けることが結婚」

「一緒にいると決めたから一緒にいるのだ」

とおばちゃんに諭されるシーンで私も耳が痛くなってしまった…

恋愛結婚だろうが何だろうが人間関係を続けていくためには、双方に不断の努力が必要であると同時にまずは今の自分に何が・誰が必要かが分かること。

SNSなんかで他者のプライベートが必要以上に見えてしまうし、今って必要なことを選び取るハードルが無駄に上がっているよなと思ってげんなりする。

 

そしてやはり結婚はお互いの人生に責任をとる行為なんだなと改めて思った。

私は精神年齢が18くらいで止まっているので基本的に責任なんか取りたくないし、それが自由であるし強みであるとぼんやり思っていたけれど、身軽すぎる人生は人にとって寂しすぎるのだろうなと、特に会社を辞めてから思うようになった。会社を辞めたことに現状後悔はありませんが。

人生の意味みたいなものがあまりにも希薄なので、生きるための適度な重しとして責任を持つのだろうな。(もちろん人が持てる責任は結婚以外にも様々あるので結婚しないことが寂しい人生というわけではない)

 ず〜っとちょうどいい重さの責任なんて存在しないだろうけど、できる限りはちょうどいい重さであり続けて欲しいと思ってしまうあたりが厄介だな。だからどうにか筋トレをしたり重しを減らしたり増やしたり持つのをサボったりしながら、地中にめり込まない程度に這いつくばって生きるしかない。 

 

こういう人の情緒や生活に密接な漫画は読める時と読めない時の差が激しいけれど、今はどうやらメンタルコンディションがいいのでこの手の作品他にも読んでみよう。

(ついでに読んだセクシー田中さんも面白かった)